No.1




「No.1ガイナイヨォ〜!!」
No.5が泣くように言う。
「分かってるさ、No.5。今日は残ってるヤツラで片付けるんだ」
No.1はさっきに連れて行かれた。
知らない振りしてるけど、オレはちゃんと知ってんだぜ?
今日はせっかくのアイツとのデートの日だったのに、仕事が入っちまった。
悪いと思ってるから、せめてNo.1だけでもアイツのところに残してやるんだ。
そうじゃないとアイツが寂しがるだろ?
オレは、ブチャラティの事もの事も、同じくらい好きなんだ。
そのへん、アイツも分かっていてくれるから、こうしてオレを行かせてくれるんだ。そう思ってる。
だから、知らない振りしてNo.1をアイツのところに残していく、それがオレからのせめてもの償い。



本当はスッゴク嬉しいんだぜ?
お前がオレを選んでくれたことが。
お前がオレ達のチームに入って来た時、アバッキオやフーゴも目の色変えてたこと、お前は知らないんだろう。
あのナランチャでさえ『って可愛いよね〜』なんて夢見るような表情で呟いてたんだ。
ナランチャの場合、まだ恋愛感情にはなってないみたいだけどな。
でもオレは正直焦ったんだぜ?
すっげぇライバル多いんだもんな。
だからお前がオレの事、好きだったって言ってくれた時は本当に嬉しかったんだぜ?
なぁ、分かってるか?
オレがどんなにお前の事好きか、分かってるのかよ



オレは一人で張り切って、さっさと仕事を片付ける。
「今日はやけに気合入ってたじゃないか、ミスタ」
ブチャラティの言葉に、アバッキオがニヤリと笑いながら言う。
「どうせの事だろう?」
「え?なんで?の事だとなんでミスタが張り切るの?」
女心とか、そういうものがまだ分からないナランチャが無邪気に尋ねるのを、フーゴが面白がって応える。
「ミスタは彼女を一人で残してきたのが心配なんですよ。だから早く帰って彼女の所に行きたいんです」
「うるせーよ」
フーゴを軽く睨みつけて、オレはブチャラティの言葉を待つ。
「今日もご苦労だったなみんな。解散にしよう」
「じゃぁな!!」
ブチャラティの解散の言葉が聞こえると同時にオレは走り出す。
だってアイツがまだいるかも知れねぇから。
今日は仕事が速く終わったから、まだ街にいるだろうから。
No.1を探せばアイツも一緒にいるんだろう。



案の定、アイツはいつもの気に入りのカフェテラスで、No.1と一緒にいた。
!」
声をかけるとアイツは振り向いてオレを見る。
「もう任務終了?早かったのね」
「お前の為に早く終わらせて来たんだぜ」
そう応えれば嬉しそうに微笑む。めっちゃ可愛いぜ…。
「それにお前がNo.1連れてっちまうからよぉ…」
本当はNo.1は故意に残していったんだけど、そう言っておく。
「ミスタのおバカさん」
するとアイツは不意に席を立って…。
あれ?なんで怒ってんだよ?なんかマズイ事言ったか?
「おい!どうしたんだよ!」
声をかけるけど、アイツは振り向いてくれなくて。
隣でNo.1が喚いてるけど、その声もオレの耳には届かない。
!!」
呼び止めるけど、アイツは物凄い勢いで走っていっちまった。
足速いんだな、アイツ…。
妙なところに感心していると、No.1が言った。
ハ『ミスタはアタシの事嫌いになっちゃったのかな?』ッテ心配シテタゼ?」
すると、他のヤツラまで喚きだす。
「ミスタガニ、チャント『好きだ』ッテ言ワナイカラ怒ッチャッタンダヨォ〜」
「追イカケナクテイイノカ?ミスタ」
「わかってるよ。お前らひっこんでろ」
オレはピストルズを戻して、を追いかけた。
ったく…女心ってのは難しいぜ…。



走り回ってやっと見つけたは、ブチャラティとアバッキオと一緒にいた。
「何やってんだアバッキオのヤツ…」
見れば、アバッキオはの肩に腕を回している。
アバッキオもアイツの事を狙っていたのを思い出して、オレはいてもたってもいられなくなった。
「何してんだよ、アバッキオ」
三人が一斉にオレの方を見る。
「いくらアバッキオでも許せねぇぜ、オレの女に手ぇ出すのはよ」
勝ったのはオレなんだからな。に好きって言われたのはこのオレなんだ。誰にも譲らないぜ。
すると、アバッキオが放った意外な一言。
「言えるんじゃねぇか、そういう事」
「はぁ?」
状況が良く飲み込めないオレを放ってブチャラティとアバッキオは去って行く。
そうしてオレは、さっきNo.1が言っていた言葉を思い出す。
「なんで怒ってんだよ、
バカだな。オレがあんまり『好き』とか言わないからって怒っちまったのか?
言葉が全てじゃないって…お前はそういう事ぐらい分かっているはずなのに、それでもオレの言葉が欲しいのか?
女心は本当に難しいぜ…。
いきなり抱きついてきたを、オレはそれでもしっかり抱きしめた。
「ねぇミスタ、アタシミスタが大好きよ。ミスタはアタシの事好き?」
上目遣いでそう尋ねる姿がサイコーに可愛くて。
「聞くなよそんな事。好きに決まってんだろ?」
なぁ、オレはあんまりそう言う事、真面目に聞かれると困っちまうんだ。
だってすっげぇ照れるだろう?
だからオレからのメッセージ、気付いてくれよ。
「オレがなんでNo.1をお前のとこにやったか良く考えろよ。お前が『No.1』なんだぜ?」
そう耳元で囁いてやると、アイツは顔を赤くして…それでも嬉しそうに微笑んで。
「本当に大好きよミスタ」
オレもおんなじ気持ちだぜ。
だけどオレは応えるかわりにアイツの額にキスをしてやるんだ。



『好き』と対になっています。ミスタ視点。
20100621加筆修正

お題は[ドリーマーに100のお題]様よりお借りしました。*現在リンク切れです