好きじゃない。
好きじゃあない。
アンタの事なんて全く好きなんかじゃあない!



アフターカーニバル!




「なあ、ちょっとお願いがあるんだけど」
いつもの甘ったるい声に更に甘さを追加した声がして、その声の主が隣に腰を降ろした。
彼がこんな甘い声を出してお願い事をしてくる時は大概ロクな事じゃあない。
「できればそのお願いは聞きたくないわ」
そう言ってみれば彼は拒否の言葉すら嬉しそうに聞いている。
嗚呼、この変態!
はくるりと身体の向きを変え、あからさまに彼を避ける。
「ああ、そんな冷たい態度がアンタはディ・モールトベネなんだけどさッ!」
そう笑ったメローネはちっともめげる気配も無く彼女の肩に手を回し、ぐいっと自分の方に向きなおさせた。
「アンタの好みを教えてくれないか。頼むよ」
言いながらPC型のスタンドを持ち出してくるメローネには身の危険を感じる。
「ああメローネあなたついに私を母体にしようってわけなのね。仲間だと思っていたのに貴方にとって私は母体候補の一人でしかなかったってワケなのね。リーダー助けて!」
一息に捲くし立てメローネが口を挟む隙を与えないようにしながら逃げようと試みるが流石にそう簡単にはいかず、腕を捕られ、立ち上がりかけたはバランスを崩して倒れるようにソファに逆戻り。
すかさずメローネに両手を捕らえられ、彼の手によってソファの背もたれ部分に縫い付けられる。
「やめてお願い私まだ死にたくない。ていうか敵と戦って死ぬならまだしも仲間に殺されましたとか悲しすぎる!」
彼のペースにはまってはいけないと口を忙しく動かしてみるも、彼はそんな彼女の思惑もお見通しのようで。
「その表情ベネだぜ。ベリッシモ、イイ!」
焦りと僅かな恐怖を浮かべた女の表情はメローネの劣情を煽るだけだった。
ああ、そうだったこの男にこんな反応をしてやってはいけないのだった。けれど一体どうやったらこの状況から脱する事が出来るだろうか。
スタンドを使ってもいいのだが仲間相手にそれをしたくはない。かと言っていくら相手がメローネでも男は男、自由を奪われた両手はちっとも使えそうに無くて。
まさに追い詰められた獲物の気分。目の前には美味しいご馳走を前に舌なめずりすらしそうな猛獣が。
こんな時に限ってアジトには他の仲間達の気配すらない。(もちろんメローネは二人きりなのを判っていて絡んできたのだろうけど)
まさに万事休すな彼女の瞳についつい涙が滲む。
「泣くなよ。抑えられなくなるじゃないか」
その言葉に一瞬にして涙など引っ込んでしまった。泣く事すら許されないのだ、この男の前では。
無反応が一番いいと理解したは半ば諦めた表情でメローネから視線を外した。
そんな彼女の反応にメローネはくすり、と笑みを零し。
「別にを母体にしようなんて思ってないさ。純粋な興味なんだ。もし、キスをするならどういうのがいいのかなって」
メローネの足がソファに上がって来た。身体を寄せ、逃げ場を塞いでくる。
母体にはしないと言うのなら一体この状況はなんなのだろうかと考える彼女の思考を分かっているのかいないのか。
「オレ、アンタに惚れてるんだよ本当に。だから好みを教えてくれないか。アンタが好きな形でキスをしてやりたいんだ」
男にしておくには勿体無くなるような綺麗な笑顔で大真面目に言うものだから。
「ふ、普通のでお願いします…」
なんて思わず言ってしまったりして。
「ベネ、はそう言うところがカワイイ!」
そう言ってメローネがそっと唇を重ねてきた。
それはとても優しくて、それでいて蕩けてしまいそうなくらい、甘くて。
たっぷりとその唇を味わいリップ音を立てて唇を解放し、彼女の耳元で「好きだぜ」と囁いてやる。
思いもよらない相手から思いもよらない告白をされてしまったの頭の中はまさに真っ白。
それでも突然の甘い言葉と蕩けるような口付けを貰ってついつい相手が誰であるかを忘れて顔を赤くしてしまうが。
、このまま子作りもどうだい?」
なんて言われて。その頬に思い切り腰の入ったビンタを食らわせてやりながら、やはりメローネはメローネだと彼女は思った。
それでも、もうこの変態を拒む事が出来ない。
認めたくないけれど、この胸の動悸は。
惚れてしまったら後の祭り。



一人祭り企画にご参加くださったみずたき様にお贈りします。
変態なメローネに迫られる、とのリクエストでしたので、変態変態…と考えていたのですが、改めて考えてみると変態ってなんだ!?ともやもやしてきました。
最終的には変態=メローネと思い「あ、いつものメローネでいいのか」となったのですがいかがでしたでしょうか。
ちなみにアフターカーニバルとは「後の祭り」の事です。言ったのは私ではありません!
by.盈
20100711