※捏造ばりばりな上にトンデモキャラ(オリジナル)がぼんぼん出てきます。それでも構わない方はスクロール





























たとえこの身が滅びようとも
たとえその血が薄まろうとも
確かに継がれて行くものがあるのだと思えばそれでいいと
ねぇ、貴方もそう思わない?



それは一つの未来のカタチ




どたばたと騒がしい足音が聞こえた。
「またかよい」
と呟いてその身をベッドに横たわらせていたマルコは眉を顰め、机に向かって書き物をしていたは苦笑を浮かべる。
「ママー!」
半べそをかきながら飛び込んできたのは幼い少年。
小さな身体がに向かって飛び込んで行く前に、マルコがその身体を抱きとめた。
「また泣かされてんのかよい」
ベッドに腰掛けその膝に少年を抱き上げてべそをかく顔を覗き込む。
「どっちに似りゃあこんな泣き虫になんのかねい」
そう言いながらも頭を撫でるその手付きは優しく、少年はぐすぐすと鼻を啜りながらも涙を引っ込めた。
「あら、私じゃないわよ」
「おれでもねェよい」
自分の小さい頃はこんな泣き虫ではなかったと言い合う二人の、だがこの少年は確かに二人の子供だった。
父親譲りのくせのある髪は、母親と同じで燃え盛るような赤。
眠たそうな瞳と厚めの唇はマルコ似だと彼女は言い、無鉄砲な性格はに似ていると彼は言う。
「今度は何をやったんだよい」
そう尋ねる父親に「ぼくは悪くない!」と主張する声を聞きながらは静かに部屋を出た。
食堂へ向かえばその扉の前で可愛らしい声に呼び止められる。
さん…!」
かの男と同じ呼び方に振り返ればそこには彼女の息子より幾分か年上の、だがまだ十分に少女と呼べる子供が立っている。
少女の父親に良く似た黒い髪に黒い瞳。目つきは女の子にしては少々悪いかも知れないが、大人になればきっと涼しげな目元の美人になるだろうと思えるその少女に柔らかく笑みを返す。
「貴方のお父さんも私を良くそう呼んでくれたわ、アン」
さん…またエドと喧嘩しちゃったの…」
申し訳なさそうに言う少女の髪を優しく撫でるは穏やかに笑みを浮かべている。
「エドも頑固だから仕方ないわ」
マルコの言う通り、確かにそういうところは自分に良く似ていると思う。
「エドも反省しているわ。いまココア淹れてあげるから部屋に行って一緒に飲みましょう。それで仲直りすればいいわ」
家族はみんな仲良くして欲しいの。と告げれば素直に頷きが返ってきて、はにっこりと笑みを深くした。



暖かいココアを二つとブラックコーヒー、それからミルクをたっぷりと入れたカフェオレをトレイに乗せたがアンを伴って部屋に戻れば、マルコに言い含められたエドが二人を出迎える。
互いに目を合わせ暫くはお互いを伺うように見ていたエドとアンの、「ごめんなさい」と言う声が重なれば、マルコもも穏やかに笑って二人の頭をそれぞれ撫でた。
背の低い簡易テーブルを引っ張り出してきてその上に飲み物を置いてやれば子供達は今までの事など綺麗さっぱり忘れてしまったかのようにそれに飛びつく。
ココアを飲み干してしまった二人が部屋に置いてある図鑑を広げて眺め始めたのを見て、も再び机に向かった。
「程ほどにしておけよい」
どのくらい進んだのかとマルコが彼女の手元を覗き込めば、それはもう殆ど終わりに近かった。
船長として日々忙殺されているマルコの書類の処理くらいはと手伝いを申し出た彼女は、マルコが身体を休めている間にだいぶそれを片付けてしまっていたらしい。
「あとは貴方のサインだけよ、マルコ」
ほんの僅かな数字を書き込んで書類を書き上げた彼女からペンを受け取って一通り目を通して最後の空白にペンを走らせたその時。
「船長!海軍です!!」
一応扉をノックしたものの慌しく入ってきたクルーがそう告げれば、マルコとが立ち上がる。
「お前は留守番だろうがよい」
長年の経験で敵襲と聞けば思わず飛び出しそうになる癖が未だに治らない彼女にマルコが言い聞かせるように告げる。
「この身体で戦おうなんて思うんじゃねェよい」
その手が穏やかに膨らみ始めている彼女の腹を優しく撫でた。
「そうでした」
ばつが悪そうに笑いながら再び椅子に腰を降ろした彼女を見てマルコは満足そうに頷くとエドの頭に手を置いた。
「ママとアンを頼むぞ」
直々に命名されればそれが何よりも大切な使命であるかのように力を入れて頷く少年に、マルコは笑みを浮かべて部屋を出て行った。
マルコが出て行くのと入れ違いくらいで一人の女が部屋にやってくる。
「隊長!ここにうちのアンが…」
僅かに取り乱した様子でやってきた女に、は苦笑した。
「相変わらず『隊長』って呼ぶのね。もう0番隊は無いのに」
「あ、ごめんなさい、さん」
つい癖で、と苦笑いを浮かべる女は0番隊としては一番若い、最後の入隊者だった。
がエドを身ごもった時に0番隊は解散となり、今ではそれぞれが1〜16番隊の各隊に配属されている。
ナースとしての職に戻ったものもいるが、この女はエースの後釜に着くように2番隊の隊長を務めている。
自分が隊長となった今でも、0番隊だった頃の習慣での事を隊長と呼ぶ事があるのを、お互い癖はなかなか治らないものだと笑った。
「それより、海軍が…」
彼女の不安も仕方が無い。
エースの子。あのゴール・D・ロジャーの血がまだ生きているのだと知ったその日から、この船に戦いを仕掛けてくる海軍の数は目に見えて増えた。
だが、この船に乗る誰一人としてそれに大人しくやられているような人間ではない。
「大丈夫よ。マルコも出て行ったし、それにビスタだってジョズだって、誰一人として負けたりはしないわ。大切な家族を失うのは、もうたくさんだもの」
どことなく寂しげな表情で、それでもそう言うに、女は安心したように頷く。
何年も前の事だが未だに鮮明に思い出せる、サッチの、エースの、オヤジの最期の姿。
それを思うとはツン、と目の奥が痛むような気がした。
「大丈夫だよ!ママだってアンだって、みんなぼくが守るんだから!」
母親の寂しげな表情に子供特有の観察眼で目聡く気付いたエドがパパに任されたのだからと胸を叩く。
その姿には大きな笑みを浮かべる。
やがて大砲の轟音と高らかな剣の交わされる音がすれば、未だにそれに慣れない子供達がそれぞれの母親の脚に縋りつく。
先程の威勢はどうしたのかと思わず笑みを零すだけの余裕があるのは、今甲板で海軍と戦っているであろう家族達の強さを知っているから。
その強さを信じているから。
激しい怒号に怯える子供達を宥めているうちに外は静かになり、やがてコツコツと廊下を歩いてくる音がして。
子供達には悟られないように警戒を強めたと女が視線を交わすも、扉が二回ノックされて二人は肩の力を抜いた。
「失礼するよ」
穏やかな声で姿を見せたのはビスタだ。
「ビスタおじさん!」
相変わらず子供に懐かれやすいビスタが少女の小さな身体を抱きとめて笑みを見せる。
「いい子に隠れていたかな?」
その言葉に大きく頷く少女にまた笑みを返すとビスタはを見やる。
「全て片付いた。マルコは今後処理に追われているが、なに、すぐ戻るだろう。身体の方は大丈夫か?」
昔からにも甘かったこの男は今の喧騒が身重な彼女に障っていないか心配だったのだろう。
わざわざ自ら様子を見に来てくれたビスタに、は穏やかに頷き返した。
「全く元気よ。ビスタもお疲れ様」
労いの言葉を掛ければ満足そうに笑って後処理を手伝ってくる、と部屋を出て行くビスタの髪にも白いものが混じり始めていて、否が応にも時の流れを感じる。
そりゃあ子供達だって大きくもなるし、自分だって、マルコだって歳を取るわけだ。
「ママ、パパまだ戻ってこないの?」
「パパはまだお仕事があるから、それが終わったらすぐに戻ってきてくれるわ」
エドの頭を優しく撫でながらはまだ見ぬ未来に思いを馳せる。
もしかしたら、エドはアンとくっつくかもしれない。
そうして自分が死んで。あの頃を知る家族全てが死んでしまっても。自分を、彼等を覚えている者達が、子供達がまたさらにその子供達がそれを継いで行ってくれるのなら。
自由を愛して気儘に生きたその血がどこかで生きていてくれるのなら。
それだけで自分の人生は幸せだったのではないかと。
サッチの、エースの、オヤジの愛した家族は、また新しい家族に囲まれて。



ねぇ、貴方の人生は幸せだったと思わない?



もしかしたらこんな未来もあるかもしれないと言うお話。
子供達は「どっちの父親が強いか」で喧嘩していましたw
20101022